古民家を拠点に「キャリアツーリズム」を展開。 夫婦で取り組む新しい人生の見つけ方
目次
—現在、キャリアコンサルティングの会社を運営されています。どのようなお仕事ですか?
企業と個人それぞれに向けたサポート事業
企業向けと個人向けの2つの柱がありまして、企業に向けては採用に関する困りごとをサポートする、いわゆる人事コンサルティングを、そして、個人に向けては、仕事だけではなく生き方も含めて、自分を見つめ直すためのキャリア相談を展開しています。2021年に千葉県香取市に移住して夫と共に始めた事業で、今年で4年目になります。
なぜ東京ではなく地方で開業したかというと、日常から離れた場所での体験を通して、自己の振り返りや新たな気づきを提供したいという思いがあったからです。
東京から100km圏内に絞り、車を走らせて見つけたのが香取市にある古民家でした。この古民家は、自分たちの拠点として、また、研修所としても利用できるようにしました。ここで、泊まりがけで行う「キャリアツーリズム」という独自の取り組みも行っています。

—ユニークな取り組みですね。「キャリアツーリズム」について詳しく教えてください。
日常から離れた場所で出会う体験と対話
「キャリアツーリズム」は、私たちが独自に作ったプログラムであり造語なのですが、こちらも、企業向けと個人向けにそれぞれ展開しています。
企業向けとしては、社員旅行の令和版と言いますか、日常を離れた場所で社員同士のコミュニケーションをより深めたり、お互いをより理解するきっかけとして活用されることが多いですね。言わば、大人の合宿のようなものです。
皆で取り組むワークショップを通して新たな発想が生まれたり、組織内での対話が活性化することでチームの連帯感が向上するというメリットがあります。配置替え後の雰囲気作りや社員同士の関係性の構築に役立つ面もあります。
また、個人向けとしては〝泊まれるキャリア相談所〟として、1日1名限定でキャリアコンサルティングを行っています。経営者や、独立・起業を目指している方、また、キャリアに関するモヤモヤを言語化したいという方などを対象とし、オリジナルのプログラムや私たちとの対話を通して、これからの人生をじっくり考えるお手伝いをしています。
現在は、この取り組みを他の地域にも広げ、各自治体や地域団体と連携してキャリアコンサルティングと観光を掛け合わせた仕組みをプロデュースしています。

—人材育成やキャリアデザインに興味を持ったのはいつ頃ですか? また、起業のきっかけについても教えてください。
就職だけではないキャリアのあり方を
私は大学時代にバックパッカーとして海外を旅したことがあり、そこで出会った人々の生き方に大きな影響を受けました。たどり着いたゲストハウスでは、常識に縛られず自由に生きる人々の姿があり、大人たちが夜な夜な集って人生を語り合う様子は、当時、自分の生き方に迷っていた私にとって新鮮なものでした。
そこで、初めて自分の人生観や本音を深く聞いてもらう体験をしました。仕事や人生について考える新たな視点をもらったと同時に、恐れずに社会に出ていいよと背中を押してもらった気持ちになったんです。
その経験から、私もいつか誰かの背中をそっと押せるような存在になりたいと考えるようになりました。旅に出て内省する時間を持つことがいかに有意義かを実感したことが、「キャリアツーリズム」の発想にもつながっています。
大学卒業後は、仕事やキャリア、より良い生き方に関わる仕事がしたいと考え、新卒で人材系の会社に就職し、コンサルタントとして約4年間仕事をしました。
仕事をする中で次第に見えてきたのは、長く続いた終身雇用制度が維持できなくなっていく社会で、キャリアに対する考え方に変化が起きているということ。一つの企業に就職したら定年まで働くことがほとんどだった日本では、個人のキャリア構築も企業内で完結してきました。しかし、それが通用しなくなる社会が見えてきたとき、私たち日本人は、個人でキャリアを作り上げるスキルがまだ弱いと感じたのです。
就職だけではなく、学びや副業も含めた個人の可能性を求める視点が必要だと思い、起業して取り組みたいと考えるようになりました。
起業を考えはじめてからは、組織作りや会社運営について学びたいと考え、小さなスタートアップ企業に転職し、修行のつもりであらゆる仕事を担当しました。
—ご夫婦で起業されましたが、移住や起業についてパートナーとの意見や意向の違いはありませんでしたか?
思いを一つにして夫婦で起業
最初は、自分の事業プランに彼を巻き込むのはどうかと思ったのですが、起業の考えや目指したいことを話すうちに、彼も個人の生き方や社会の課題について、とても似た考えを持っていることがわかったんです。意気投合し、いずれ一緒に起業できたらという思いで2020年に結婚しました。それから千葉県に移住し、会社を立ち上げたのが2021年。夫婦共に会社員を辞めて移住したことで、自分の中に軸が定まった感覚があります。
事業はコロナ禍にスタートしたこともあり、試行錯誤をしながらの船出でした。まずは自分たちの活動を知ってもらいたいと、日本一周キャリア相談の旅に出たこともあります。
SNSでキャリア相談をしたい方を募り、車で全国を横断しながら、キャリア相談と宿や食事を物々交換するというものです。一人ではきっと成し得なかったと思うのですが、信頼できる仲間であり、同志でもある夫と共に力を合わせて成し遂げることができました。
全国をまわったことで、それぞれの地域で息づく文化に触れ、また、すてきな出会いもたくさんありました。この旅での出会いが、その後、各地域でのキャリアツーリズムの実施や、地域創生のお手伝いをする仕事にもつながっています。

—これから実現したいこと、将来の展望をお聞かせください。
キャリアツーリズムを多くの方に
自分たちが起業する時、仕事やキャリアのことを気軽に話せる相談相手や、経験をもとに助言をくれるアドバイザーを見つけることができませんでした。試行錯誤しながら手探りで進んで来た結果、遠回りもしましたし、失敗もしてきました。その苦い経験があるので、何か新しいことを始めたいという方の良き相談役になりたいという思いがあります。
また、私が旅先で経験したように、日常の中では見えないことが、外の世界に出かけることで見えてくることがあります。多くの方に「キャリアツーリズム」を知っていただき、自分自身を深く見つめ直す機会として活用していただきたい。旅先でしかできない体験や対話を通して、新たな可能性を見つけるお手伝いを続けていきたいと思っています。
マイフィロソフィ
『人間は夢を持ち前へ歩き続ける限り、余生はいらない』
(伊能忠敬の言葉より)
1日のスケジュール
07:00
起床
朝食、家事など
08:00
その日の仕事準備や調べものなど
11:00
ゲストを迎え入れる準備開始
掃除、提供する食事の仕込み
13:00
昼食
14:30
キャリア相談のゲスト到着
宿の案内など
15:00
コンサルティングスタート
19:00
ゲストと一緒に夕食
夕食後はワークショップなど
21:00
後片付け等
24:00
就寝
こちらは「泊まれるキャリア相談所」の予約が入っている日の一日のスケジュールです。提供する食事は、地域の紹介を兼ねて、地元の食材を使って作っています。














































































