子どもたちが育つ町をより良くするために貢献したい
目次
—現在、愛知県東栄町にお住まいです。町との出会い、移住のきっかけは?
大学時代に訪れた『花祭』に魅了され
大学で地域振興について学んだことがきっかけで、地域活性化や地方の可能性について興味を持ちました。卒業後は地域おこし協力隊として地域に貢献したいと考え、〝お祭り〟が好きだったこともあり、在学中に全国約60ヶ所ものお祭りを訪ね歩きつつ、移住先を探していました。
その中で、愛知県東栄町の『花祭』がとても印象に残っていたんです。
『花祭』は鎌倉時代から伝わる神事で、五穀豊穣や無病息災を願って町の人たちが夜通し舞うお祭りです。神秘的で熱気あふれる雰囲気に魅了されたファンも多く、国の重要無形民俗文化財にも指定されています。
当時、訪れてみて強く印象に残ったのが、お祭りの熱気と共に、町の人たちのオープンな雰囲気です。皆さんとても人懐こいというか、旅行者の私に気軽に話しかけてくださる方が多く、初めての土地でもくつろいで過ごすことができました。
その後、ちょうどよく東栄町の地域おこし協力隊の募集があったため、あの町だったら楽しく活動できるかもしれないと思い応募することにしたんです。

—地域おこし協力隊の活動はいかがでしたか?
自分の力不足に失望
地域おこし協力隊の任期は3年と決まっています。最初は、3年あれば何かできるだろうとのんきに考えていましたが、実際仕事についてみると、そんなに甘くはなかったです(笑)。
私の場合、大学卒業後すぐに隊員になったため、社会人経験もなく、仕事のスキルもない状態からのスタートでした。町のために何かしたいという気持ちはあっても、力不足から思うように進められないもどかしさを感じて悶々とする日もありました。ある程度社会経験を積んだ後で応募した方が良かったのではないかと、勢いでこの町に来たことを後悔したり。
そんなとき、町でセリサイト(絹雲母)という鉱物を採掘している会社の社長に、このセリサイトを町おこしに役立てられないだろうかと相談を受けたんです。
セリサイトというのは、主にファンデーションの原料となる鉱物で、現在日本で産出しているのは東栄町にある会社だけ。そこから世界中に輸出され、その質の良さでコスメ市場ではトップシェアを誇っています。もしかしたら、皆さんがお使いのファンデーションにも、東栄町のセリサイトが使われているかもしれません。
当時、私は「え⁈ ファンデーションって鉱物から作るの?」と、まずそこに驚くほどで、この町から世界に輸出されているものがあるなんて、恥ずかしながらまったく知りませんでした。
聞いてみると、それは町の人たちも同じで、「何やら鉱物を採掘している会社がある」という程度の認識しか持っていない方も多かったようです。
こんなに素晴らしいものが町にあるのだから、ぜひたくさんの人に知ってほしいという気持ちが湧き上がりました。
そこで、ここ東栄町でコスメのルーツを探り、町の魅力に触れ、そしてセリサイトを使ったコスメ作りが体験できる『naori なおり®︎』というプロジェクトを立ち上げました。

—任期が終わった後はどのような活動をされましたか?
町が持つ魅力的なコンテンツを発信したい!
プロジェクトを立ち上げたのは、地域おこし協力隊としての任期の終盤だったのですが、活動を通して町のことを知れば知るほど、「魅力的なコンテンツがいくつもあるのに、知られていないのはもったいない」と思うようになりました。
当時、町には観光協会がなく、広くPRすることもできない状況だったので、まずは観光協会を作ることを町に提案しました。
幸いなことに提案が通り、地域おこし協力隊としての任期を終えた後も町に残り、1年間限定で役場の臨時職員として観光協会の立ち上げを担当することになります。いろんな方にサポートいただいたおかげで、その後1年で「東栄町観光まちづくり協会」(現在は一般社団法人東栄町観光まちづくり協会)を立ち上げることができました。
役場の臨時職員としての任期を終えた後は、観光協会職員となり、『naori なおり®︎』のプロジェクトは、その中の仕事の一つとして責任を持って継続しました。
当初は、3年あれば何かできると考えていた私でしたが、一から始める仕事は、ほんの数年で成し遂げられるようなものではないと実感しています。
その後、縁あってこの町で結婚し、2人の子どもを授かりました。
出産を機に観光協会の職員としての仕事は終え、『naori なおり®︎』を個人で引き継ぐ形で法人化し、今に至ります。
—町に来たばかりの時と今とでは、心境に変化はありますか?
出産を機に、町に腰を据える決意
実は、地域おこし協力隊として来た時も、任期を終えて町の職員となった時も、観光協会を立ち上げた時も、この町でずっと生きて行くことまでは考えていませんでした。
出産を機に、ようやく腰を据える決意ができたように思います。
子どもはこの町で生まれて育つわけですから、自分が育つ町に愛着を持ってほしい。
それには、まず、私たち大人が自信を持って「この町は素敵なんだよ」と、心から誇りに思うことが大切だと考えました。
より良い町にするために、自分も貢献したい。仕事に取り組む姿を子ども達に見てほしい。そんな思いが生まれて、『naori なおり®︎』を通して、より一層町を盛り上げていきたいと考えるようになったんです。
プロジェクトを立ち上げて約9年。法人化してからは3年になります。
手作りコスメの体験にいらしたお客様と話が弾み、そこから仲間の輪が広がったり、新たな仕事につながることもあります。人と出会い、町の魅力が伝わって町のファンが増えた時、この仕事を始めてよかったとやりがいを感じます。
大変なこともありますが、今では時々、仕事なのか遊びなのか、分からなくなるほど仕事を楽しんでいます。

—地方への移住を考えている方にアドバイスを
気になる地域にまずは通ってみて
好きな町や気になる地域があれば、まずはその場所に通ってみることをお勧めします。
インスピレーションに従って勢いで移住するのも悪くはないと思いますが。どちらかといえば、私はそのパターンで後々悩んだ時期もあったので(笑)。
現地に通ううちに、地元の方と話す機会が増えますし、知り合いもできると思うんです。移住する前に、いろんな情報を聞いておくと、どのような仕事が必要とされているか、どのような心構えが必要かなど、移住した後のイメージが具体的になると思います。
ちなみに、東栄町には民宿やゲストハウスなど、宿泊施設もたくさんありますので、気になった方はぜひ遊びにいらしてください。
マイフィロソフィ
・日々感謝、日々精進。
1日のスケジュール
06:00
起床
朝食づくり、身支度、保育園の準備など
07:00
家族で朝食
08:00
子どもたちを保育園へ送る
帰宅後、自宅で事務作業等
10:00
コスメ体験の会場へ
コスメ体験(午前の部)に対応
12:30
お昼休憩
14:00
仕事再開
午後のコスメ体験対応や事務作業
17:00
保育園にお迎え
帰宅後、夕食、入浴、寝かしつけ
21:00
就寝
子どもたちが小さいので、休日には一緒に自然の中で遊ぶことが多いですね。近所には同年代の子もいるので、仕事が忙しい時はお互いに預かったりと、地域一丸となって子育てができる環境がありとても助かっています。



























































