古い建物を改装してカフェに 好きなことしかしない精神で遊びを仕事に

目次
—もともと建築設計の仕事をされていました。起業のきっかけは?
古い建物とコーヒーを取り巻く文化が好きで
昔から古い建物が好きで、また、コーヒーのある空間や文化にも惹かれていました。美術大学の建築学科で学び、卒業後は設計施工の工務店で主に住宅や店舗の設計をしていましたが、6年半ほど勤めた後、そろそろ自分が本当にやりたいことをやろうと思い立って会社を辞めました。それから、フリーで設計の仕事を請け負ったり、設計事務所でアルバイトをしながら、同時にカフェでバリスタの修行を始めました。
コーヒーの勉強をするには、バリスタの学校に通うという選択肢もあるのですが、実際にカフェで働けば資金も貯められるし、コーヒーの淹れ方以外にもカフェにまつわるさまざまなことが学べると思い、学校よりも現場に飛び込むことを選びました。
カフェで1年ほど修行したのち、埼玉県本庄市に物件を見つけて移住することになります。
—本庄市を移住先に選んだ理由は?
レトロな商店街で理想の建物と出会い
会社員時代に仕事で本庄の商店街を訪れたことがあり、昔ながらの建物が並ぶ様子を見て、この商店街でコーヒーが淹れられたら、新しい文化を創れる気がするという印象を持っていたんです。移住先を探す過程でここに築100年を越す建物と出会い、大家さんを探すところから始めました。
大家さんと交渉中に、私自身の結婚と出産が重なりまして、また、コロナ禍だったこともあり、交渉開始から契約するまでに2年ほどかかりました。契約後は地元の方々にも手伝ってもらい、約半年かけてお店を改装し、2021年11月に『本庄デパートメント』をオープンしました。

—『本庄デパートメント』とは、どんな場所ですか?
何かをやりたい人が集まるコミュニティスペース
カフェにコワーキングスペースやシェアオフィスを併設しています。
私自身、ここを事務所にして設計やデザインの仕事を請け負っていますし、一緒に経営しているパートナーは動画制作のプロなので、仕事の内容としては一言で表せないくらい多岐に渡っています。
トークイベントに呼ばれたり、創業支援をすることもありますし、行政と連携したプロジェクトを行なったりもします。当初から、枠にとらわれず幅広く仕事がしたいと考えていましたが、ここまで活動が広がるとは思ってもいませんでした。

—現在、3歳の女の子のママでもあります。
土日は娘も一緒に仕事先へ
商店街で暮らしていると、まるで商店街全体が自分の家みたいな感覚になるんです。娘も生まれた時から街のアイドルみたいに近所の方々にかわいがっていただき、おかげで人見知りしない性格に育ちました。街の皆さんが子どもに関わってくれる感じはまるで昭和時代のようで、そんな雰囲気もこの街の好きなところです。
平日は保育園に預けていますが、土日に仕事が入ることも多いので、そんな時は娘も一緒に連れて行きます。仕事とプライベートの垣根はありません(笑)。
私自身、意識的に「好きなことしか仕事にしない」という心持ちで生きているので、仕事が趣味であり、今は忙しいけど楽しい。楽しいと思って仕事をしていると、自然と同じ志を持つ仲間や楽しいことが集まってくると思っています。そんな姿を、娘が、そして町の人たちが見ていてくれたらいいなと思います。

—これから特に力を入れたい活動は?
本庄でしかできない学びの機会と体験できる場所を生み出すこと
昨年から、本庄市が長く行なってきた「七高祭」というプロジェクトの伴走をしています。本庄市には高校が多くあり、進学校もあるため、近隣の町をはじめ県外や都内から通う子もいるのですが、そんな中で、学校・学年の垣根を超えて〝マチノブカツ〟というチームを作り、学校では教わらないことが経験できるというプロジェクトです。
学生たちが自主的にチームを立ち上げて、本庄市内全域、さらに市外まで飛び出して活動しています。まさに町の部活のようなもので、プロの料理人に本気で学ぶ「料理部」や、ボードゲームが楽しめる場を作る「ゲーム部」、さらには、「がらくた音楽隊」という、空き家や路地で見つけた古材やがらくたで楽器を手作りし、音を奏でながら本庄市内にある古い建物に囲まれた路地を探検するブカツもあります。
例えば、料理部では実際に厨房で商品を作って販売し、収支の計算まですべて学生たちがやります。活動を通して実地でマーケットを学ぶことができるんです。また、ゲーム部では、ボードゲームを楽しむ空間がコミュニティの醸成にもつながっています。
若い時に、社会や地域に出て経験することって、その後の大きな糧になると思うんです。高校生の勉強といえば受験勉強がメインになりがちですが、私自身の経験から考えても、実際社会に出て役立つのは受験勉強ばかりではないですよね。
せっかく本庄で学生生活を送るからには、ここでしかできない学びや体験をして欲しい。その機会を生み出すことは今後もぜひ続けて行きたいと思っています。

マイフィロソフィ
・好きなことや趣味を仕事に。商店街を遊び倒す
1日のスケジュール
07:00
起床
朝食づくりなど
08:00
子どもの朝食と身支度
08:30
仕事開始
夫が子どもを保育園へ送る
18:00
保育園へお迎え
帰宅後、夕食準備
20:00
夕食、お風呂など
22:00
子どもが就寝
仕事を再開
2:00
就寝
土日にも仕事が入ることが多く、今のところ自分の時間はほぼありませんが、趣味をすべて仕事にしているので毎日が遊びのような感覚です。