女性にこそ注目してほしい パラレルキャリアの可能性
目次
—新しい働き方・パラレルキャリアについて教えてください
生き方の幅を広げるための選択肢
パラレルキャリアとは、複数のキャリアを同時に持つ柔軟な働き方のことです。長く日本の働き方のスタンダードとされてきた終身雇用制度が崩れつつある今、多様な働き方が注目されています。
例えば、会社員として働きながら副業やボランティアを行うこともそうです。生き方の幅を広げるためにいくつかのキャリアを築いたり、生業を一つの会社に頼るのではなく、本業以外でも収入を得る手段を持っておこうという考え方です。
最近では、政府も働き方改革の一環としてパラレルキャリアを推進しており、副業を解禁する企業が増えてきました。個人にとってメリットがあるだけではなく、副業を通して得た経験やキャリアが、結果的に本業にもいい影響を及ぼす効果もあります。
私自身も会社員として仕事をしながら、イベント開催や講演活動をするなどパラレルキャリアを実践しています。
—副業を始めようと思ったきっかけは?
会社の外でもキャリアは積める!と気づき…
私は学生時代にライターとして活動しており、卒業後は出版社で本の編集や執筆に携わりたいと考えていました。ところが、新卒で入った出版社で最初に配属されたのは、本の編集とはまるで関係のない部署でした。とても悩み、何とか本来の希望である編集の仕事ができないかともがいていた時期があります。
そんなとき、知り合いが本を出版するにあたり、編集できる人を探しているという話を聞いたんです。当時、本の編集は未経験でしたが、「それ、私がやります!」と、思い切って手を挙げました。
それから、会社に勤務しながら夜間や休日に独学で編集を学び、約一年かけて電子書籍を編集しました。リリースした書籍は、幸運なことに書籍販売サイトで売上1位を獲得するなど評判を呼び、それ以降、個人的に執筆や編集の仕事が来るようになったんです。
この経験で〝会社の外でもキャリアは積める。仕事は自分で作ることができるんだ!〟と気づき、心がとてもラクになりました。
このような経緯から、キャリアのあり方について考えるようになり、2018年、会社員を続けながら「パラレルキャリア研究所」を立ち上げました。
—独立ではなく〝二足のわらじ〟を選んだ理由は?
未来へのリスクヘッジに
コロナ禍の前は、副業での収入が会社の給料を上回ったこともあるので、確かに独立という選択肢もありました。しかし、このままずっと好調が続くとは思えなかったんです。むしろ、定収入が確保できていることが気持ちの安定につながり、会社の外では「軌道に乗るかわからなくても挑戦したい仕事」などに注力することができました。
「一つの道を突き進む」「退路を断って挑む」といった美学にとらわれがちな私たち日本人ですが、私は未来へのリスクヘッジのためにも、会社の仕事は続けていきたいと考えました。
その後、コロナ禍で世の中が一変する様子を目の当たりにしたこともあり、何があっても慌てず自分の人生を生きるために、軸足をいくつか持っておくことは有効だという思いを強くしました。
「命綱は残しておき、未来につながるハシゴはいくつも架けよう」と、講演でもよく話します。会社員生活でのキャリア設計が見通しにくい人でも、望む未来に近づき、望まない未来のセーフティネットを自力で用意できるのがパラレルキャリアの魅力です。
—最近、ママになられたそうです。心境に変化は?
仕事と子育ての相乗効果について考え中
つい1ヶ月ほど前に出産しまして、今は育休中です。新生児でまだ生活リズムが不規則なので、娘の世話をしつつ、手が空いたときにパラレルキャリア研究所の仕事をしています。
以前は、特に研究所を立ち上げた当初はかなり忙しく、土日も家にいない時間が多かったのですが、家族が増えた今は、家で過ごす時間をできるだけ持ちたいと思っています。
これまではキャリアのあり方を中心に考えてきましたが、今まさに、仕事と子育ての両立、シナジー(相乗効果)について考え中です。せっかくライフステージに変化があったので、自分の経験を踏まえて「育休中にできるパラレルキャリア」などの講演コンテンツも企画しているところです。児童福祉にも関心があり、情報発信をしていければと思います。
これからも会社員と副業のパラレルワークをずっと続けるかというと、今の時点でははっきりと決めていなくて。というのも、パラレルワークのいいところは、家庭の事情や社会状況の変化に合わせて柔軟に仕事のスタイルを選択できることでもあるので、今後の状況や心境が変わったらその時に考えるつもりです。複数の職業を持っていることで「今の生活や社会が変わっても、自分には選択の自由がある」という気持ちの余裕を持てています。
—パラレルキャリアの活動を通して思うことは?
上昇志向ではなく、可動性思考で
こうしてキャリアについての講演をしているからか、よく〝上昇志向〟が強い人だと思われがちなのですが、それはちょっと違っていて、私自身は〝上昇〟ではなく〝可動性〟を持っていたいと思っているんです。
昇進や出世、社会的ステータスなど、世間の価値観に無理に自分を合わせるのではなく、できる仕事、活躍の場を増やしておき、自分の人生を自分で選べる状態にしておきたいという考えです。
会社員をしていると、異動や転勤など、どうしても自分でコントロールできないことがありますよね。女性の場合、とくに出産や家庭の事情でキャリアが分断されがちですし、パートナーの転勤時に会社を辞めて帯同するのもほとんど女性です。キャリアの築き方に不安を感じている女性にこそパラレルワークはぴったりなんです。
人生のフェーズが変わったときも、何かを犠牲にすることなく幸福度の高い人生を送るため、新しい働き方にぜひ注目してほしいと思っています。
マイフィロソフィ
・可動性思考
世間が決めた〝上〟を目指す上昇志向でも、現状維持でもなく、チャンスや行ける場所、できる仕事を増やしておくこと。
1日のスケジュール
07:00
起床
身支度、朝食
08:30
自宅を出る
電車内でパラレルキャリア研究所のメール返信など
09:00
出版社に出社
12:00
お昼休み
昼食
パラレルキャリア研究所のオンラインミーティングが入ることも
17:00
出版社退勤
19:00
講演に登壇など
こちらは、育休前のある一日のスケジュールです。先月出産したばかりなので、今は生活リズムが不規則なのですが、育児の合間をみて自宅でパラレルキャリア研究所の仕事をしています。娘がもう少し育つまでは、執筆やオンライン講演など自宅でできる仕事を増やせたらと考えています。