予想外の出来事をきっかけに起業 地域に関わる仕事って面白い!

目次
—現在、PRや企画を手がける会社を経営されています。起業のきっかけは?
再就職先の社長が突然いなくなり…
以前は、山口県や北九州市の文化施設で職員をしていました。もともと好きなアートに関係する仕事をするのが夢だったんです。
いくつかの施設で仕事をした中、北九州市の文化施設では「教育普及」を担当しました。より多くの方にアートや文化に興味を持ってもらうため、さまざまな企画をたててアプローチする、いわば文化のPR活動のようなものです。
やりがいのある仕事でしたが雇用期限があり、期限を迎えるにあたって、このままアートの仕事を続けるか、それとも違う仕事に挑戦してみるか迷っていました。
ちょうどその頃、廃業した映画館の施設を利用してまちづくりに活かそうというプロジェクトを手がける会社から声をかけていただきまして、それは面白そうだと、思い切ってチャレンジすることにしたんです。
北九州市の黒崎というところは、もともと映画館が多い地域だったのですが、時代の流れで営業をやめた映画館がいくつもありました。
プロジェクトは、まちづくりの好例として全国からも注目され、私もやりがいを持って仕事に臨んでいたのですが、そこである困ったことが起きます。
なんと、プレオープンの5日前になって、プロジェクトを先導していた社長と突然連絡が取れなくなりました。後になって、資金繰りがうまくいっていなかったことが分かりましたが、その時は理由もわからず大混乱です。
しかし、大切なプレオープンはもう目前。
地元出身の俳優をゲストに呼んだり、企業や行政、地元の方々などたくさんの人が関わっています。直前で止めるわけにもいかず、残されたスタッフで力を合わせてプレオープンをなんとか乗り切りました。
—なかなかハードな経験をされましたね。
いっそのこと、自分で始めよう!
その後、結局プロジェクトは閉じたのですが、残されたスタッフはまだ雇用保険にも入っていない状況。社員の中では私が一番年上だったこともあり、皆が失業保険を受け取れるように手続きをしたりと、後始末に奔走することになりました。まったく想定外の出来事です。
大変でしたが、まわりの方がすごく心配してくれて、何かと助けていただいたおかげで乗り切ることができました。縁に恵まれたと感謝しています。
社長からも多くのことを学びましたし、仕事の上では今でも尊敬しているんです。いなくなったことを除いては(笑)。
残念な展開ではありましたが、この経験が後に独立・起業するきっかけにもなります。
さあ、これからどうしようと考えたとき、今までは誰かの下で仕事をしていたけれど、そうすると今回のような思わぬ展開になることもある。もう、いっそ自分で始めてしまおうと思いました。自分が自分を裏切ることはありませんから。
このようなわけで、私の場合は「これがやりたいから起業しよう!」ではなく、「起業しよう! さあ、何を?」というスタートです。
それまでは、独立や起業などまるで関係のないことだと思っていたのに、自分でも予想外の心境の変化でした。

—まちづくりやPRの仕事に決めた経緯は?
地域に関わる仕事って面白い!
まっとうできなかったプロジェクトではありますが、まちづくりに関わったことで「地域に関わる仕事って面白い!」と気付き、地域やまちに興味が湧いてきたところでした。
当時はちょうど全国でまちづくりの機運が高まっている時期で、ここ黒崎でも担当の方々が手探りで企画立案やPR活動を始めたばかり。その様子を見て、地域の文化施設で培った企画や広報の経験が活かせるかもしれないと考えたんです。
特に、教育普及でも「市民参画」の事業を担当していたことから、まちづくりや地域活性に様々な方が参画するきっかけをつくりたいと、さっそく、私なりに企画書を作り上げ、なかば乗り込むような形でプレゼンしました。
苦労はありましたが、結果的にそれが今後の道筋をつくるターニングポイントの仕事になりました。

—企画はスムーズに受け入れられましたか?
前職で学んだことを心に留めて
まちづくりに関わった経験があるとはいえ、ぜひにと頼まれたわけではありませんし、加えて私は黒崎の出身でもありません。プレゼンの場では批判を受けたりと、最初から好意的に受け止められたわけではありませんでした。
しかし、前職で学んだこととして、いかに多くの方に〝自分ごととして取り組んでもらうか〟がカギになると心に留めていたので、批判を受けて反論したり、自分の意見を押し通したりはしませんでした。自分が住んでいるまちを魅力的にしたい、より住みやすくしたいと願う気持ちは同じですから、納得いかないことがあっても、相手への敬意を忘れてはいけないと考えていました。
「まちづくり」という大義ではなく、〝自分が居心地のよい場をつくる〟こと、それがまわりにじわりと広がっていくという思いで動いていたら、次第に賛同してくれる仲間が増えてうまくいくようになりました。
まちづくりの企画は、一人の力だけではなく、たずさわる人、土地、歴史、環境の力といったものが組み合わさって生まれます。起業して今年で12年目になりますが、その瞬間に立ち会えることがこの仕事の醍醐味であり、私自身とても大きなやりがいを感じて取り組んでいます。

—新しいチャレンジに迷っている方にアドバイスを
数字に表れない能力も大切
失敗が怖くて一歩を踏み出せないのだとしたら、「心配しなくて大丈夫!」と言いたいですね。あとは、「自分が思っているほど人は気にしていない(笑)」。
自分の企てがうまくいかず、思惑とは違う結果が出てしまうことを〝失敗〟というのだとしたら、それは決して残念なことではありません。
例えば、PRしたにもかかわらずお客さんがあまり来なかったとき。
来てくれた一人のお客さんと話をして意見を聞くことができたら、それは自分の力で集めたデータであり、今後に活かせる貴重な資料となります。
仕事のキャリアとは何かを考えたとき、売上の達成など数字で見える実績のほかに、重ねた経験や積極性、協調性など、数字として現れない能力もとても大切だと言います。
失敗から何かを学ぶことは、この貴重な能力がアップすることにつながると思うんです。これはどんな仕事にも共通して言えることですよね。
自信を持って、失敗を恐れず、ぜひ一歩を踏み出してみましょう!
マイフィロソフィ
・立つ瀬をつくる
1日のスケジュール
07:00
起床
ストレッチ、朝食、掃除など
09:00
仕事開始
メールチェックと返信
資料作りなど事務作業
11:00
昼食
打ち合わせの準備
13:00
午後の仕事開始
1〜3件ほど対面やオンラインで打ち合わせ
打ち合わせがないときは資料作りや事務作業
18:00
仕事終了
夕食、入浴など
23:00
就寝
「趣味は?」「息抜きは?」とよく聞かれますが、実は趣味らしい趣味がありません。休日でも仕事のことを考えています。ワクワクすること、楽しいことを考えようと思うと仕事につながるので、趣味は仕事なんだと最近開き直ったところです(笑)。