子育て・介護世代のスタッフにも 働きやすい職場づくりを

目次
—以前は石川県で看護師をしていらっしゃいました
夫の転職を機に東京へ
看護師になってから約8年間、地元の石川県で病院に勤務していました。
「なぜ看護師に?」と聞かれることがありますが、私の場合は特に大きな志があったわけではなく、家族の病気やケガでお世話になった病院の看護師さんの姿が印象的で、「仕事をするなら看護師に」と思ったのがきっかけです。
大変な仕事だけど大丈夫なのかと家族に心配されましたが、私自身は深く考える前に「やってみよう!」と行動するタイプなので、ためらうことはありませんでした。
病院に勤務した8年間は、看護師としてさまざまな経験を積んだ貴重な時間でした。
やりがいある仕事ですが、やはり命を預かる現場なので大変なこともあります。若さゆえに無理をしていることに気づかず、体調を崩したこともありました。
キャリアを重ね、無我夢中だった日々をふと振り返ることが増えた頃、夫が東京の会社に勤めることになったんです。そこで、東京への引っ越しを機に病院を辞め、いったん家庭に入ることにしました。
—育児に専念された後、仕事に復帰されたのですね
家庭を優先しながら仕事を再開
東京に引っ越してすぐに長女が生まれました。初めての育児は想像以上に大変でしたが、夫は出張が多く、実家は遠く離れていたので頼る人はいません。まさに今で言う〝ワンオペ育児〟です。まわりに知り合いがいない中で孤独を感じることもありましたが、人生でこの時期にしかできないことに精一杯取り組めたのは幸せでした。
続いて次女が生まれ、子どもたちが幼稚園に入り、気持ちに少し余裕ができた頃、仕事を再開することにしたんです。
まだ手がかかる頃でしたので、正社員はあきらめてパートタイムで訪問看護の仕事に就いたのですが、この頃は理不尽な思いをすることが度々ありましたね。
園の行事など、家庭の事情に合わせてシフトを組みたいという希望を持っていたのですが、それが叶わないことが多く、職場の雰囲気もあまりよくありませんでした。スタッフ配置の仕組みを少し変えれば、皆が無理することなく希望のシフトに入ることができるのにと思うこともありましたが、パート職員の私がそれを提案するわけにもいきません。
上司の顔色を見ながら「大変申し訳ないのですが…」とシフト希望を出す日々。職場でも〝申し訳ない〟、子どもに対しても〝ごめんね〟と思いながら仕事をするのは気持ち的にとても消耗しました。
—現在の会社では所長としてスタッフ配置も担当されています
「この日はお休みをいただきます」と言える職場に
今の会社に入って8年ほど、所長になってからは約3年になります。
子育て中や、家族の介護をしながら仕事をするスタッフもいる中、皆が働きやすい環境を築くことが私の役目だと思っています。パート時代に大変な思いをした分、自分が管理者になった今は、家庭の事情で休まなければならないときに、きちんと休める体制づくりにはこだわってきました。何より、気持ちの余裕は仕事の質を高めることにつながります。
当初、「この日に休んでもいいでしょうか?」と、申し訳なさそうに聞いてきたスタッフが、今では「この日はお休みをいただきます」と堂々と言えるようになってきました。現場の意識も変わってきたのだと、とてもうれしく思います。
また、業務で必要なこと、必要でないことを徹底的に仕分けて業務の効率化を図ることにも力を入れてきました。過去に自分が経験してきた中で、疑問に思っていたことや、改善したいと考えていたことを実践し、今ではほぼ残業ゼロを達成できています。
失敗したらどうしようと深く考えず、思いついたら「やってみよう!」という単純な性格が(笑)、ここでは少し役に立ったのかもしれません。

—仕事をする中で壁にぶつかったことはありますか?
私は誰のために働いているんだろう?
印象深いのは、コロナ禍でのことです。
スタッフが濃厚接触者となって一定期間出勤できないことが続いた時は大変でした。頭も体も常にフル稼働で対応し、帰宅するともうぐったりです。
そんな中、リモート授業でずっと自宅にいて鬱々としていた娘たちとぶつかってしまったことがあるんです。あの頃は皆が不安でいっぱいでしたよね。些細なことがきっかけで口論になり、「お母さんはいつも皆のために働いてるって言うけど、そんなの嘘だよ。本当は自分のためでしょ!」と言われたんです。ショックでその言葉がずっと心の中から消えず、私にしてはめずらしくヘコんでしまいました。
〝私は誰のために働いているんだろう?〟
患者さんのため、地域のため、そしてもちろん家族のため。そう思う気持ちに嘘はありません。でも、よく考えてみたら、それは誰に頼まれたわけでもなく、自分がそうしたいから働いているだけのこと。自分はこうありたいのだと思っているからです。
娘の思わぬ一言のおかげで、あらためて深く考えたことでした。
不思議なもので、自分の意思で仕事をしていると思い直したら、些細なことでモヤモヤすることが減り、さらに仕事にやりがいを感じるようになりました。
もし、もう一度娘に同じことを言われたら、「そうだよ、お母さんは自分が働きたくて仕事をしているんだよ」と、堂々と言い返します(笑)。
—所長として、これからの目標は?
より良い仕事環境と質の高い看護を
スタッフ配置の方法や業務の効率化はもちろん、何か問題が起きたときに表面的な対処で終わらせるのではなく、その原因を見きわめて根本から改善することを心がけていきたいです。そうすることで、さらに安全な体制を築くことができますし、次の世代にとってのより良い環境作りにもつながると思うんです。そのためには、スタッフの意見もどんどん聞いてアイデアを取り入れていきたいですね。
また、看護という仕事の性質上、分かりやすく数字で評価できる部分はほんの一部です。看護の質の高さなど、数字に表れない部分についても会社にきちんと報告し、スタッフの仕事ぶりが評価されるよう繋げていきたいとも思います。
評価が上がり、待遇が上がることで生活や気持ちに余裕が生まれ、それがさらに仕事の質の向上につながる。そんないいループができるのが理想であり、大きな目標なんです。質の高い看護で地域に信頼され、長く愛される看護ステーションを目指したいと思っています。

マイフィロソフィ
・いつも心に太陽を
1日のスケジュール
06:00
起床
朝食づくり、お弁当づくり
07:00
朝食
洗濯等の家事
08:20
出勤
08:30
始業
朝礼、業務調整、訪問
緊急対応等
17:30
終業
少しだけ残業
18:00
退勤
買い物して帰宅
19:30
夕食
夕食後は入浴、
読書やテレビ視聴など
22:20
塾へ娘を迎えに
帰宅後は残りの家事など
24:00
就寝
オンコール当番の日は緊急訪問が発生することもあります。プライベートで楽しみにしているのは、家族や友人と食事に行き、たくさん話して笑うこと。仕事と家事でまだまだ多忙ですが、いつか熱中できる趣味ができたらいいなと思います。