会社員時代に培った経験を まわりに求められて起業

目次
—現在のお仕事について教えてください。
二拠点生活でパラレルワークを実践中
2017年に起こした会社で、ダイバーシティに関する講演や研修、コンサルティングなどを行なっています。ダイバーシティというのは、「多様性」を意味する言葉で、年齢や性別、価値観など、さまざまな違いを持つ人々が共存しながら社会や組織を運営していこうという考え方です。
社会的にはもちろん、ビジネスにおいても大切な観点で、生産性を重視した成長期が終わり次のステージを目指す場面では、多様な価値観というものが、社会や企業を成熟せさる重要な要素になると考えられています。
私自身は、会社の仕事の他に、NPO法人の理事、大学講師や地域団体での活動などもしていますので、いわゆるパラレルワーカーですね。
また、1年前に北海道に移住しまして、東京との二拠点生活を送っています。

—以前は長く企業にお勤めでした。どのような経験を積んでこられましたか?
コンピュータエンジニアなど多彩な仕事を経験
もともとは京都の出身で、大阪の企業にコンピュータエンジニアとして就職しました。入社後はシステム開発に従事し、先端技術教育のプロジェクトリーダーなども務めたのですが、ある時、会社の合併に伴い東京に転勤となります。これは、私にとって大きな出来事でした。
ずっと関西で過ごしてきた私から見ると、東京は無機質で人情味がなく、街ゆく人たちが皆無表情で歩いているようなイメージです(笑)。敵地に乗り込むようで、最初はイヤでイヤで仕方がありませんでした。
しかし、実際に東京に来てみると、イメージとは違って意外と楽しいところでした。
ビジネスライクな仕事の進め方も性に合っており、あらためて仕事の楽しさに目覚め、もう関西には戻れないと思ったほど(笑)。それから47歳で会社を辞めるまでずっと東京です。仕事では、企業の合併に際し、ブランド構築や、ダイバーシティ推進にも従事しました。会社で培ってきたスキルが今の仕事に繋がっています。
—起業しようと思ったきっかけは?
環境に変化が欲しくて会社を辞めて…
きっかけと言えば、環境の変化を求めて会社を辞めたことです。
私は物心ついた頃から、定期的に環境の変化を求めてしまう性分で、会社を辞めたのも、事業のアイデアがあったからではなく、自分自身の環境に変化を求めたことが大きいですね。
会社では、定期的に配置換えや転勤があり、環境に変化を求める自分の性格に合っていたのですが、ある程度の年次になったとき、このまま会社にいてもあまり環境の変化は望めないと思ったんです。将来の可能性を考えると、まずは自分自身に大きな変化が欲しいと思い、退職する道を選びました。
いざ会社を辞めてみると、会社員時代にダイバーシティやITエンジニアリングに関わっていた経験から、そういった関連のお仕事の話をいただく機会がありまして。それに応えるうちに、きちんとした形で仕事をしようと思い会社を設立することにしたんです。なので私の場合は、先に起業の計画を立てていたわけではなく、環境の変化を求めた結果、これまでの自分のキャリアを活かす形で起業することになったという経緯です。

—実際に起業して思うことは?
仕事仲間のありがたさ
独立してみて気が付いたのは、会社員時代に当たり前だったことが、当たり前ではなくなるということですね。例えば、会社の一員として仕事をしていたときは、他の人の経験やノウハウ、失敗談など、組織の中で共有されていた情報が、独立すると一切ありません。大したことではないように思えますが、こういったことが、業務上のリスク回避や、仕事をより効率的に改善することにつながっていたのだと気付かされました。
情報やノウハウを共有できるって、ありがたいことなんです。
起業して仕事を続ける上では、情報を共有したり、仕事の悩みを打ち明けられる仲間の存在はとても大切です。 思うのは、プライベートでの芯から分かり合える〝友人〟は少なくても充分ですが、仕事や趣味の〝仲間〟はたくさんいた方が心強いものです。
—これから起業を目指す女性にアドバイスを
まずは起業したつもりで動いてみて
独立してまだ7〜8年という私がアドバイスするのもおこがましいのですが、起業すること自体は、以前に比べてやりやすくなっていると思います。
特に新たに事業を始める女性は、資金を借り入れる際に金利などで優遇される制度があったりと恵まれている面もあります。社会が女性の活躍を求めているという今ですので、求められていることは何かを見極めれば、スタート自体はそう難しいことではないと思います。
ただ、「時間や仕事に追われるストレス」「会社で正しく評価されない不満」といったネガティブな悩みを解消したくて独立を考える場合には、独立しても状況はそう変わらないかもしれません。
仕事に追われるのはどちらも同じで、むしろ、独立後は仕事をする環境を自ら作る必要があるため状況はより複雑です。受動的に仕事するのか、能動的にするのかという違いですね。人によっては、言われた仕事をこなす方が気持ちの負担がない場合もあるかもしれません。
また、正しい評価も正しくない評価も、仕事をする上ではどちらもついて回るというのが私の実感です。
先ほどお話ししましたが、会社員であることは不自由な面もある一方で、メリットも大いにあります。やりたい仕事や実現したいアイデアがあって起業したいという場合は、会社に籍を置きながら、まずは1ヶ月間ほど、起業したつもりで動いてみてはどうでしょうか。有給休暇など使えるものはすべて使って時間を確保し、本気でやってみてください。手応えを感じたら、そこからスタートを考えるのもありだと思います。

マイフィロソフィ
・ひとりじめしない。
1日のスケジュール
06:00
起床
畑仕事
07:30
NPO活動
08:30
朝食
09:00
会社の仕事
12:00
昼食/NPO活動
畑仕事
昼寝
15:00
会社の仕事
18:00
夕食
入浴など
20:00
NPO活動
22:00
就寝
北海道での一日です。畑仕事を始めて、今ではお風呂で爪の間に入った土を眺めるのが心地いいという(笑)新たな心境の変化も楽しんでいます。