40代で会社員からエステティシャンへ転身 〝冷え性〟改善に特化したサロンを経営
目次
—〝冷え性〟に特化したサロンを経営されています。開業のきっかけは?
40代で会社を辞め美容学校へ
エステサロンを経営する前は、新卒で入社した企業を含め、2社で約20年間会社員として働き、総務部や広報、役員秘書などを経験しました。男女雇用機会均等法が施行されたのは、私が社会に出てしばらく経った頃です。当時、一般企業の現場では、システムはもちろん、まだまだ人々の意識が追いついていないのが現状でした。女性はある程度の年齢を過ぎたら結婚して退職するものだと考える方は多かったですし、仕事もいわゆる〝一般職〟と呼ばれるサポート業務が中心。一般職から総合職への変更も現実的には難しく、後輩男性が昇格していく中、「これ以上頑張っても変わらない」と感じていました。
そこで、自分に何か価値をつけたいという思いから、会社に勤めながら勉強していろんな資格を取ったり、料理教室に通ったりしていました。
ある日、エステティシャンの資格を取るという友人から「施術のモデルになってほしい」と頼まれて、役に立つならと引き受けたんです。
施術を受けてみると、お肌はもちろん、気持ちが明るくなったことに驚きました。私は、もともとアトピー体質でお肌に自信がなく、うつむきがちで過ごすことが多かったのですが、施術を受けた帰りには顔を上げて歩いていました。
エステが気持ちの面にも影響することを知って興味を持ち、エステティシャンの技術を習得することに。その後、美容学校に通うために会社を退職しました。当時は40代。エステティシャンは体力勝負の面もありますから、今思うとギリギリの方向転換だったかもしれません。
—美容学校を卒業後、新たに始めたお仕事は?
独立後、ストレスを抱え続けた日々。
美容学校を出た後は、化粧品会社と契約を結び、販売代理店を始めました。それまでの会社員としての生活とはまるで違う環境です。やりがいはあるのですが、慣れない業務や人間関係に悩まされて右往左往する日々。今でこそ、独立開業に関するノウハウはインターネットで検索すればいくらでも出てきますが、当時は情報自体がとても少なかった。独立してやっていく上でのノウハウや心構えなどは手探り状態でした。
そうこうしながら3年が経った頃、なんとストレスから円形脱毛症になってしまったんです。もともとの冷え性にも拍車がかかり、体はガタガタでした。そんな状態で頑張り続けたある日、勉強の一環として足を運んだ鍼灸の先生のアドバイスで、自分自身の冷えの問題と向き合うことになります。それが、あらためてサロンの在り方を考え直すきっかけになりました。
—2回目の転機を迎えられたんですね
冷え性改善に特化したサロンに転向
冷えについて学ぶうちに、いくらいい化粧品を使っても、土台である体の調子が悪ければ意味がないということに思い至りました。実際、冷え性の改善によって自分の体調が整っていくのを実感し、同じ悩みを持つ方々の役に立てるのではないかと考え、自宅でサロンを開くことに。培ってきたエステの技術に、鍼灸の温浴を取り入れたオリジナルの施術「オンセラピー®️」を考案するなど、冷え性改善に特化したサロンです。
後に、化粧品の代理店契約は解約し、現在はサロンの運営に専念しています。
サロンでは、ブログを始めるなど情報発信にも力を入れました。SNSを取り入れたのも割と早い方だったと思います。今はこういった手段があるので、個人経営もやりやすくなったんじゃないでしょうか。実際、SNSがきっかけで新たなお仕事につながることも増えました。
—独立を考えている方にアドバイスを
過去に学んだ知識や経験が力に
サロンを続けて思うのは、過去に学んだことや経験が、今になって活きているということです。例えば、食を通して冷え性改善にアプローチするために、スパイス講座やインド料理教室を開いていますが、これは、会社員時代に趣味で学んだインド料理の知識が役に立っています。当時は、将来仕事にしようとは思っておらず、ただ好奇心から学んだことでした。勉強したことだけではなく、会社勤めでの経験や、旅に出て見聞きしたことが活かされる場面もあります。
昨今、若い方があまり海外に行かないという話も耳にしますが、ぜひいろんなところに出かけて見聞を広げていただきたいですね。その時はわからなくても、後になって知識や経験が自分を助けることってありますから。
一方、成功したことや楽しかった経験だけではなく〝失敗の経験〟が後から活きたり、人間的な成長に繋がったこともあります。最近は失敗を極度に恐れる傾向がありますが、とんでもない失敗でも、その後の大きな成長の糧になると感じています。
—これからの夢・目標を教えてください
年齢に合った働き方で続けていきたい
幸いなことに、60歳を過ぎた今、サロンを通して出会いの幅が広がり仲間にも恵まれています。さらに、コロナ禍を経てこの春からは、さまざまな業種の方との交流も増えました。新しい食育プロジェクトに協力したり、地元商店街の一員として広報を担当し、街の活性化を図る活動もしています。
一方で、しばらく前にはガンを経験し、自身の健康や働き方についてあらためて考える機会がありました。
若い頃のように体力が続かなかったり、以前は簡単にできていたことに時間がかかったり。母が晩年に言っていた「年をとって、初めてわかることってあるのよ」という言葉の意味が、身をもってわかり始めたところです(笑)。
そんなこともあり、今は、その年代や体力に合った働き方で続けていきたいと思っています。自分自身の経験からも、体を冷やさないことや、食の大切さを多くの方に知ってほしい。オリジナル施術「オンセラピー®️」の技術者の養成や、学んだ知識を発信することを自分なりに続けていきたいですね。
マイフィロソフィ
・心が変われば行動が変わる。行動が変われば習慣が変わる。習慣が変われば人格が変わる。人格が変われば運命が変わる。運命が変われば人生が変わる。
(会社を辞めたとき、上司にもらった色紙の言葉)
1日のスケジュール
04:50
起床
メダカのお世話、植物に水やり、ストレッチをするなど、自分の時間を過ごす
07:00
朝食
掃除、メールの返信など
10:00
サロンオープン
施術・教室
19:00
サロンクローズ
20:00
夕食
23:00
就寝
コロナ禍をきっかけにメダカの飼育を始めてすっかりハマりました。仕事以外では、友人たちにインド料理をふるまったり、皇居の勤労奉仕をライフワークにするなど充実した時間を過ごしています。