おしごと紹介コーナー

アジアの女性たちに活躍の場を!失敗しながら進んでいますが、忙しくも楽しい毎日です。

黒田尚子(くろだなおこ)さん
2016年、神戸市に「神戸アジアン食堂バルSALA」をオープン。食堂ではアジアの各地域出身の女性たちが母国の料理を提供する。「Empowerment of all people」をコンセプトに、すべての人々が本来の力を発揮できる社会を目指す。趣味は飲食店巡り。

—飲食店関連の企画営業職を経て、現在は神戸で食堂を運営されています。
オープンのきっかけは?

日本で孤立しているアジアの女性たちに活躍の場を作りたい

最初のきっかけは、大学時代に社会起業学科で学んだことです。社会起業というのは、事業によって社会課題の解決に取り組むことなのですが、そのフィールドワークの中で、結婚などでアジアから日本にやってきたものの、言葉の問題でコミュニケーションが取れずに孤立している女性たちがいることを知りました。その時に知り合ったのが、今一緒にお店をやっているスタッフです。最初は、特に起業にこだわっていたわけではないのですが、自分が問題意識を持ったり、それに対して何かできないかと考えたときに、飲食店という形態に行きつきました。

お店をオープンする前は、企業に就職して飲食店への企画営業を3年半ほど経験しています。そこでたくさんの飲食店のオーナーやシェフの方々にお話を聞いた経験が、今とても役立っています。美味しい料理だけで店がうまくいくかというとそうではなく、マーケティングや経営戦略が必要だということを学んだのは大きかったですね。

会社員として働いて貯めたお金で、お店をオープンしようとしたのですが、実はその時、信頼していた人にお金を託したら、それがすべてなくなってしまうという大事件が起こりまして。自分の未熟さが招いたことではあるのですが、あの時は、もうこれで夢も終わりだと、本当に落ち込みました。そんな時、声をかけてくれたのが父なんです。長く百貨店で働いていた父は、私がやりたいことをよく理解してくれて「親子ということではなく、ビジネス相手として一緒にやろう」と言ってくれました。だから、今お店をやっていけるのは父のおかげなんです。オープンまではそんなこともあり、まさに波瀾万丈の船出でした。

神戸市南京町のお店

—軌道に乗ったところで、コロナ禍に。危機をどう乗り越えましたか?

こうあるべきという考えを捨て、新しいことにチャレンジ

お店をオープンして3年ほどは赤字続きで、ようやく少しよくなってきた頃にコロナ禍になりました。お客さまに来ていただかなくては成り立たない商売なのに、それができない。飲食店を長年経営している方にアドバイスを求めても、この時ばかりは皆初めてのことで、同じく手探り状態です。
アイデアを出し合って、新たにデリバリーサービスやSNSを始めるなど、さまざまなことを試しました。うまく行ったり、ダメだったりもしましたが、試行錯誤しながら、何とか乗り切ることができました。

想定外のコロナ禍ではありましたが、新たなことにチャレンジしたことが、今は自信にもつながっています。飲食店はこうあるべき、と決めてかかっていたら生き残れなかったかもしれない。柔軟に考える術が身についたと思います。

—仕事をする上で大切にしていること、心がけていることは何ですか?

自分にできないことは、まわりの力を借りる

学生時代に出会った〝脱・身の丈〟という言葉を大切にしています。私はもともと、どちらかといえば消極的なタイプで、「自分はそんなことできない」とよく言っていました。

でも、自分で自分の限界を決めてしまったら、そこで終わり。そこを脱する気持ちがあるかないかで、その先の行動が変わるんだという話を聞いて、自分もそうありたいと思いました。

もし、自分にできないことがあったとしても、まわりから知恵を借りれば前に進めるかもしれない。壁にぶつかったら、まわりの力を借りてチャレンジするのもありだと思います。

—これからの夢や目標について教えてください

各地にお店を出して、雇用を増やしたい

「Empowerment of all people=すべての人々が力を発揮できる社会に」というコンセプトを広めるのが目標です。今のお店を長く続けると同時に、他の場所でもお店を増やしたい。お店が増えれば、雇用を増やすことができるし、その地域の人々に社会課題を知ってもらうきっかけにもなると思うんです。

店内の壁画に記されたお店のコンセプト

—今、起業に迷っている女性たちにアドバイスを

一つ一つの失敗も、つながれば成功への道になる!

一歩踏み出す時って、失敗が怖いという気持ちがあると思うのですが、たとえ失敗しても大丈夫! これは、後になって気づいたことですが、たとえ一歩が失敗でも、一歩一歩の点がつながって、ちゃんと成功につながっていくものだと思います。

あと、自分でできないと思ったことは、まわりに助けてもらったり、逆に自分が補ったりと、お互いに助け合いながら進めばできることもあります。私もたくさん失敗しながら進んでいますが、今がとても楽しいし、充実した毎日を過ごしています。

スタッフの代わりができるよう調理もマスターした
店内にはフィリピンの女性アーティストによる壁画が

マイフィロソフィ

・〝脱・身の丈〟=自分の可能性を狭めない
・できない時は、まわりの力を借りる

1日のスケジュール

07:30

起床〜朝食

08:30

出勤

09:00

事務作業〜ランチの仕込み作業

11:30

お店オープン
ランチタイム営業

15:00

一旦終了

16:00

ディナーの仕込み作業

17:00

お店オープン

22:00

閉店〜片付け等

23:00

飲みに行く
気持ちのリセットに一息入れます

01:00

就寝

食事は、今すべて外食です。いろんなジャンルの飲食店に行き、お店の方の話を聞くようにしているのですが、そこでいろんな気づきやインスピレーションをもらえます。自分の楽しみでもあり、仕事の醍醐味でもあります。